元mugwumpの出産記録

お腹にエイリアンらしきものが棲みついて、飛び出るまで。

出産まであと94日 「新しい夜明け」

さあ夜が明けるぞ

準備はいいかい

今度は君が

甘える側から

甘えられる側になるんだ

さあ あの丘の頂上に立って

眩しく光る太陽を待ち構えよう

銀色の毛並みがより一層ツヤツヤに輝くだろう

 

彼女はかつて一匹狼だった

自分ではそう自覚していた

差し伸べられた同属の手を

威嚇し噛みつく始末であった

同情というものを誰よりも毛嫌いしていた

 

群れることを良しとはせずに

小さな閑散とした森に棲んだ

ひと肌恋しい吹雪の夜は

枯れ葉の中で寒さをしのいだ

荒涼とした大地に立ち尽くすこともあった

 

ある時同属の群れと出会った

中に毛並みの違う者が混ざっていた

群れという集団に身を置きながら

何とか孤独を保とうとしていた

彼もまた一匹狼であった

 

「まさか私が家族をつくるとはね」

ふと彼女が呟くことがあった

「君は最初から独りではなかったよ」

森がさわさわと枝葉を擦らせて言った

「冬は枯れ葉が 降り積もる雪から君を守っただろう

 夏は新緑が強い陽射しから君を守り

 とめどなく流れる川の水が君の喉を潤しただろう

 森の小さな生き物たちが君のお腹を満たしただろう

 君はずっと独りではなかったよ」

 

さあ夜が明けるぞ

準備はいいかい

今度は君が

甘える側から

甘えられる側になるんだ

さあ あの丘の頂上に立って

眩しく光る太陽を待ち構えよう

銀色の毛並みがより一層ツヤツヤに輝くだろう